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Photographer
高橋草元

静謐な光の中で凛と立つモデルが、少しだけ不穏な表情を宿す。

プロダクトの全体を抑えつつも、ざらついたスモーキーなトーンで独特の味わいを感じさせる。


高橋草元は写真にいつも、そんな”癖の強さ”を、そっとかすかに忍び込ませます。それが世界観や商品の良さを、きりりと引き立たせる。観る人の心の奥底に、ずっとなにかを残します。


そんなちょうどいい個性が、クライアントはもちろん、若い世代のディレクターなどから支持を受ける高橋に、彼のルーツと今、これからを、聞いてみました。





正解のある場所から、正解のない世界へ。



――いまの作風から想像もつきませんが、学生時代はストリートスナップを撮っていたそうですね。


そうなんです。大学の頃、インターンで『ファッションプレス』編集部に入って、街角でおしゃれな人に声をかけて写真を撮っていました。


暑い日も寒い日も大勢に声をかける、それなりにハートを鍛えられる経験をさせてもらいました。


ファッションウィークのときは、ランウェイの写真をひたすら撮って、すぐにアップするような仕事もしていましたね。


――写真は大学で学んでいたのですか?


いいえ。まったく。法政大学のデザイン工学部に進み、プログラミングなどを学んでいました。


もともと父が設計士で、自宅に建築模型がいつもあったんですね。どこかで影響を受けて進学しました。


けれど、プログラミングは挫折したんです。卒業はしましたが、その道はあきらめました。


――どこが合わなかったのでしょう?


コードの半角がひとつ抜けただけでエラーが起きるのが、プログラミング。それは美しくもあるのですが、僕には「正解がある」世界が、どうも性に合わなかったんです。「正解がひとつじゃない」分野のほうが好みだなと、あらためて気づきました。


そして、ちょうど同じ頃、奥山由之さんの写真集「BACON ICE CREAM」に出会って、「めっちゃいいな」と心が動きました。


雪道に落ちたグローブとか、蛇口からの水をはじくスプーンとか、見たことある風景なのに、なにか違う。奥山さん独特のグルーヴみたいなものが、日常の風景を当たり前ではないものに変えていました。


「“正解がない”写真の世界は、おもしろそうだな」と感じて、ニコンのF3を買いました。インターンでのストリートスナップもそこからはじまったんですよ。


――そして2018年に、新卒でアマナに入社されました。


「フォトグラファーになる」と決めていたので、アマナともう一社の制作会社しか受けませんでした。


独学だけで撮っていたので、ただ絞りもシャッタースピードもあやふや。よく受かったなと、今でも思っています。


配属されたのは、当時あったパレードというグループ会社で、モデルを使ったファッションやコスメなどの物撮り系の写真が多い部門でした。アシスタントとしてイチからそこで学び直しました。


当時はとにかく仕事がハードで、ヘトヘトになるまで働きながら、自分の作品も少しずつ……という感じでしたね。



――もっとも、アシスタントの頃から、ざらっととした質感のある、草元さんらしい雰囲気の作品を撮られているんですね。


入社前の作品は全てフィルムで撮っているんです。


パキッとしたいかにも広告っぽい写真より、少しスモーキーでノイズが入ったような質感が好みなので、そうしちゃいますね。


――おもしろいのはモデルとプロダクト、2つを対にしたような作品群です。人とモノなのに、色味やトーンがどこか揃っている。






プロダクトを撮り始めたのは、2020年以降からです。


それまではずっと人物ばかりを撮っていたのですが、コロナ禍でなかなか人を撮れない時期があった。そこで最初は興味なかった物撮りを挑戦してみようと、まずはじめました。


――当初、物撮りに興味がなかった理由は?


「プログラミングに近いな」と思いこんでいたからです。


ライティングも画角も自分が作り上げたそのままが写真になる。極めてロジカルな世界が物撮りだと思っていました。


人物撮影だと、思っていなかったような表情や動きをモデルがしてくれたりする偶発性から良い写真が生まれることがある。けれど物撮りには、そんなゆらぎみたいなおもしろさが生まれないと考えていたのです。


もっとも、実際に撮り始めると、意外とおもしろかった。考えてみたら、コツコツと独りでなにかをつくりあげていく作業も好きだったんですよね。人物撮影とはまた違う深さがあった。


ならば、これまで自分で撮ってきた人物の写真を左側に置き、それと対になるイメージを宿らせたプロダクトの写真を撮ってみようと着想しました。


――人物写真は、過去に撮った作品なんですね。


はい。1年以上前に撮ったものもありました。


そして人物を撮る時に設定した「気持ちいい感じ」「やわらかな雰囲気」「浮遊感」などといったテーマを、あらためてプロダクト撮影で現してみました。


人×プロダクトで撮るうち、物撮りでも躍動感というか、ゆらぎを感じるムードが宿せることを体感、自分の個性にできた感はあります。人でもプロダクトでも、ノイジーなトーンを出すのが好きなことも、あらためて強く認識できました。


加えてもうひとつのテーマとして、「プロダクトも人も、同じ世界観でしっかり撮れる」ことをプレゼンテーションしたい思いもありました。


広告などはモデル撮影と物撮りは、別のフォトグラファーが撮る機会も多い。けれど、一人が同じトーンでコントロールしながら両方撮ったほうが、あきらかに完成度が高まります。コストも下げられますしね。それを作品で伝えたかったのです。


――実際、仕事にも直結したそうですね。


はい。まさに作品を見てもらい、採用されたのがロート製薬の極潤の撮影でした。









AIも活用して「計算できない、美しさ」を求めて。



――人物×プロダクトの、作品からの延長のような写真ですね。


ありがたかったですね、

カメラマン指定でお話をいただいた案件だったので。

作品撮りのテーマになっていたプロダクトも人も、同じ世界観でしっかり撮ることへの思いが、ディレクターやクライアントの方々と自然と重なった。


アシスタントからフォトグラファーになって間もない頃の仕事でしたが、あきらかに僕にとってのターニングポイントとなった案件です。


――最近でいえばコンバース・アディクトの写真も、その意味では草元さんらしい案件ですよね



そうですね。スニーカーとモデルの両方を撮影しました。コンバース・アディクトは、コンバースの中でも、よりハイファッションに近い最上級ライン。もともと好きだったうえ、僕の作品のトーンを気に入ってもらい、採用されたらしく、とてもうれしかったですね。


リッチなモデル撮影の雰囲気に、プロダクトからのイメージが重なりあうスタイル。あと色使いや画角に、少しだけ毒っ気というか、ダークな雰囲気を入れられたのは、非常に自分好みでしたね。





――ファッショナブルだけど、少し不思議な色が入っていたり。ライティングが明るすぎないけど、どこか心地よさがある。作品や案件に、そんな違和感が少しだけ染み込んでいるのは、ご自身の好みからなんでしょうね。


そうかもしれません。


もちろん仕事はクライアントやディレクターの方針があるので、完全に従った撮影をします。ただ、ちょっとだけ癖が滲むような写真が好きです。かつて奥山さんに魅かれたのも、そのあたりですしね。


制約があるなかでも、ギリギリを攻めた写真にしたい。そうして滲む個性や癖が、結果としてその広告なりに触れた人の心に、ずっと残るような気がしているんです。




――なるほど。モデルなしのプロダクト撮影でも、スモーキーな雰囲気を漂わせたファション寄りの写真が印象的ですね。


そうですね。この『ドモホルンリンクル』の写真はインスタ用に撮影しているものです。



比較的、年齢層が高めのブランドだったのですが、「もう少し低い年齢層の方にも使っていただきたい」との狙いで、おしゃれな生活の中に入り込むようなイメージで撮影しています。


ハウススタジオでシチュエーションだけ決めて、ノリで撮っている感じなんですけどね。セッションのように現場で決めながら撮るのも好きなんです。プロダクト撮影でも、どこか偶発性みたいなものが現れやすい気もします。






――最近はCGやAIを使った撮影も積極的にされているそうですね。


はい。たとえば、アマナが運営する「Great RIVER」という、トップクリエイターをマッチングするクリエイティブプラットフォームがあるのですが、そのキービジュアルを作成しました。


僕が撮った写真をベースに、アマナのAI専門チームと共創。少しダークでファンタジックなイメージに仕上げました。


「RIVER」の名にちなんで川を挟んでクリエイター同士をつなぐようなラフを最初にADの方が考えたのですが、実現できるロケ地がなかった。そこで「AIでつくってみましょう」と。



――モデルをスタジオで撮って、背景などをAIが描いているわけですね。


これも同じで、「偶発性」と「違和感」が生み出せることに尽きますね。


実のところ、AIと手作業のミックスではあります。まずラフをもとに僕が撮影した写真を素材にして、テキストプロンプトで背景をアマナのAIチームがつくりました。


このとき、どうしても一部コピペしたような部分が生まれて、そこは手で修正しています。ですがAIと実写を掛け合わせることであり得ないような、おもしろい表現をあえて作り出すこともできると考えています。


具体的には、光が向こう側からあたっているのに、モデルへの光のつき方がおかしいんです。ただ、その少しの違和感が、新しさや挑戦心を感じさせる。人間ならばキレイに整えすぎてしまう部分を、ほどよい気味の悪さにしてくれる。AIの可能性だなと感じました。





――フォトグラファーの表現を拡張させる。AIのユニークな使い方ですね。


新しいテクノロジーは積極的にツールとして使っていきたいタイプですね。


今も外部のADの方と作品づくりをしていて、彼が有機的なCGをつくり、そこに僕の写真を重ねて新しい表現をしていこうと画策中です。僕の写真が透けて、CGの向こう側に写真があるような、ちょっと変わった作品になっています。



やっぱりいつもどこか、少しでも攻めていたい。

曖昧さや偶発性が好きなんですけどね。

そこだけはずっと揺るぎないです。



profile

高橋 草元・たかはしそうげん


1995 神奈川県に生まれる

2018 法政大学デザイン工学部卒業

2018 株式会社アマナに入社

大学ではデザインやプログラミングを学び、 趣味で始めた写真に魅了され、

毎日スナップ写真を撮影する日々を過ごす。

アマナに入社後、スタジオでのライティング技術を学び、 大学で学んだ幾何学的な視点と

スナップ写真で培った感覚的な要素を得意とし、 現在は人物撮影と物撮りを軸に活動中。


Photographerへ5つの質問


1.趣味は?

釣り。ブラックバス専門です。


2.好きなフォトグラファーは?

間中宇、大野隼男


3.子供のころの夢は?

サッカー選手


4.撮影中によく流す音楽は?

THE 1975、OASIS、ストレイテナー


5.フォトグラファーとして大切にしていることは?

写真に癖を残すこと


<文/箱田高樹>





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