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5 Sept 2025

Photographer 鈴木孝彰

多彩な引き出しを繰り出して、まっすぐに「美味しい」を表す――。

“食”に特化して数多くのクライアントワークを手掛ける鈴木孝彰の強みは、それです。

だからワクワクがあふれる食卓の雰囲気も、躍動感ある調理の瞬間も、 どんなオーダーにも柔軟かつ、誠実に対応できる。

そんな鈴木に、仕事の姿勢と、スタイルのルーツなどを聞きました。





シズル感、とはどういうことか。


――"食”専門のフォトグラファーだとうかがいました。


はい。アマナの中にある食の撮影に特化した専門チーム「hue(ヒュー)」に所属しています。


hueはシズル表現の撮影ばかりしてきました。「シズル(Sizzle)」とは、じゅうじゅうと肉の焼ける音をあらわす英語ですが、僕たちはコレを「五感を刺激しておいしさを伝えること」と捉えています。


ただ「きれい」「美味しそう」ではなく、本当にお腹が空いてきて、食べたくなるような表現が、僕たちの真骨頂。僕を含めた他のメンバーも変わらず食をメインに、広告やパッケージの撮影を手掛けています。


――hueとは、どういう意味なんですか?


英語で「色調」のことです。同じシズル表現、食のビジュアルを撮っているフォトグラファーですが、皆それぞれが異なる色を持っていることを表して、つけたものなんですよ。


――では、鈴木さんの色、写真の特徴とは?


シンプルにわかりやすく「美味しさ」を伝えられること、です。


僕個人が、その一枚から、複雑で物語性があるような奥行きを感じさせるような写真より、単純に「ココを見てほしい」とワンメッセージが伝わるような写真が好みなのも影響していると思います。


――「ブルーボトルコーヒー」のSNS用に撮影された写真、このアイスコーヒーを注いでいるものなどは、確かにとてもシンプルで明快ですね。爽快感がわかりやすく伝わる感じです。




ありがとうございます。ブルーボトルコーヒーさんのお仕事は、ADをたてず、直接ディレクションと撮影も担当させてもらっているんです。


この一枚は「グラスを商品としてアピールしたい」との狙いがあったので、アイスコーヒーをただ入れて撮るのではなく、注いでいるアクションを提案。見る方の目が自然と注がれているグラスに向くよう、氷の透け感を際立たせたりもしています。


ライトも一灯だけ、余計な情報を入れずに、最も見せたいところにフォーカスさせたつもりです。





――一転して、クライアントワークではなく自身の作品では、真っ黒に焦がしたパンの写真が衝撃的ですらあります


仕事では、絶対にやらない撮影でしたね。


あれはアマナのSNS用にフォトグラファーが持ち回りで作品をアップする企画があって、「食の写真で目を引くなら何がいいだろうか」と思案した結果、”焦げ”に辿り着いたんです。いわばシンプルなワンメッセージ。ライトも一灯です。


あと金属のサビや、デニムの色落ちとか、経年変化していくモノの表情、その美しさを食でも表したかった面もあります。




――なるほど。写真のテイストがまったく違うのはすごいですね。「シンプルな美味しさを表す」を意識した結果、幅広い表現を手段として駆使されている感じ、でしょうか。


そうかもしれません。シンプルにメッセージを伝えたい思いがいつも真ん中にある。あくまで撮影は手段と考えているんですよ。




スーパーで見かけたカレーのパッケージに、魅了された。



――食の写真に関して、今につながる原体験があるそうですね。


はい。小学校1年のときに、母親と行ったスーパーにずらりと並んだレトルトカレーのパッケージに心躍った瞬間があったんです。「美味しそう!」と売り場でひとり興奮を覚えたことを覚えています。思い返せば、写真で心を動かされた最初の体験でした。


一方で同じころに、写真に興味を抱いた気がします。店舗デザインの仕事をしていたおじがいつもカメラを持ち歩いていたんです。道具としてのカメラと、それを使いこなす姿が、なんだかかっこよかったんですよね。




――小学生の頃に心動かされたような「美味しい写真を撮りたい!」と食の世界に進まれた感じでしょうか?


それもありますし、あとはスタジオで撮影の現場にいながら、モデルなどを使った撮影よりも撮影時間の制約がシビアではなく、じっくりと一枚を作り込める食の撮影が自分にはフィットするな、と感じていたことも大きいですね。




――シンプルに美味しさを迫る、今のスタイルはどのように手にされたのでしょう?


当初は四苦八苦していましたね。入社後、3年ほどアシスタント期間を過ごしたのですが、他の人より苦労したほうだと思います。


フォトグラファーになるためには自分の作品を先輩に審査されて、評価される必要がある。あれこれ試行錯誤して提出していましたが、いつも「鈴木の写真は、当たり前のカタログみたいだな」と言われ続けていたんです。


時間をかけてスタイリングして、ライティングもめちゃくちゃ凝って、レタッチもがんばった結果、「普通すぎる」場所に着地していた。


――手間が、報われていなかった。


ええ。だから「それならいっそのこと手間とストレスを感じず、シンプルに撮ってやろう!」と振り切った瞬間がありました。






ライトも一灯にして、静物のように料理を撮るのではなく、調理の瞬間を切り取ってみようと。そこで、躍動感たっぷりな「スープを注ぐさまを上から撮った写真」や「フレンチフライと塩がフライパンの上で踊っている写真」などが生まれたのです。



「これはおもしろいね」「こういうアングル、なかったね」「ちゃんと料理や食の喜びが伝わるね」とこのときはじめて先輩がたに賞賛されて、フォトグラファーに昇格できました。そして以降は悩まずに「まずはシンプルに美味しさに迫ろう」という意識が強まり、今のスタイルに自然となっていった感じですね。


――そのほか、撮影の際に、何か意識していることはありますか?


「こういうアイデアもあります」

「こっちの道もありえますよね」

と何かしらの提案を少しでもすることです。


クライアントやADの狙いやオーダーどおりに撮るのが僕らの仕事です。しかし、「こうしたほうがもっとよくなるな」と思ったらプラスワンを提案だけでも、するようにしています。


胸を張って自分の仕事だと、言えるような撮影をしたい気持ちもあるし、何よりやっぱりシンプルに「美味しさ」に迫りたいんですよ。


ただ、些細なプラスワンの提案があった仕事のほうがお客様の評価も高く、長くおつきあいが続いているケースも多いですね。



――思い出深い仕事をひとつあげるとすると?


ひとつには絞るのは難しいですが、最近では写真専門誌の『コマーシャル・フォト』で表紙と特集の扉を撮らせていただいたものでしょうか。


同じ「ラーメンのシズル撮影」というオーダーだったのですが、表紙はデフォルメしたような少し攻めたスタイリングでの写真を。扉のほうでは町中華のやさしくて懐かしい美味しさを伝えいと考えた一枚を撮り、掲載してもらいました。


同じ食材で、同じフォトグラファーが、違う美味しさ、シズル感をわかりやすく表現できたかなと。




あと、パーソナルな意味で思い出深いのは、5年ほど前から、ボンカレーの写真をシリーズで撮らせてもらっていることです。小学生時代、スーパーの店頭で目を見開いて興奮していた自分に自慢したいですね(笑)。



――いま、仕事の醍醐味って、どういうときに感じられますか?


いい写真が撮れたときはもちろんですが、「また鈴木に撮ってもらいたい」と一度てがけた仕事を評価されたうえで、指名されるときでしょうか。


――今後のビジョンみたいなものはありますか?


もっと写真がうまくなりたいですね。きっと写真の領域は今後、生成AIやCGに変わられれるところも多いと思うのです。


ただ人の口に入る食の写真は、やはり実体のある撮影が残る可能性が高いと考えています。


だからこそ、アナログ的というかフィジカル的というか、本質的な良い写真を撮れるように、もっともっと腕を磨きたい欲求がある。


そしてできるだけ多くの人に「美味しさ」を伝えていけたら最高ですね。シンプルに。





Profile

鈴木孝彰 すずき・たかあき東京都出身。10 BANスタジオ勤務を経て、料理撮影の奥深さに惹かれ2010年アマナ入社。1秒でも長く、目を止めてもらえるような写真を目指し日々の撮影に臨んでいる。主に食関連企業の広告写真やパッケージ写真を中心に活動。



Photographerへの5つの質問


1.趣味は?

コーヒーです。いろんな豆をハンドドリップで淹れ、試しています。


2.好きなフォトグラファーは?

上田義彦、アンセル・アダムス。

 

3.自宅の壁に飾っている写真は?

自分で撮った子どもの写真。

 

4.撮影中によく流す音楽は?

オアシスやビートルズなど、UKものが多いですね。

 

5.フォトグラファーとして大切にしていることは?

誠実であること。





<文/箱田高樹>


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